去る 10 月8日、大阪ストライキ2次事件で、大阪地裁刑事 11 部(佐藤卓生裁判長) は、関生支部の西山直洋執行委員ほか1名に対し、懲役2年6月(ただし未決勾留日数 中、西山は 150 日、ほか1名は 70 日を参入)、執行猶予5年という有罪判決を下した。 大阪2次事件は、関生支部と全港湾大阪支部が 2017 年 12 月、「運賃引き上げの約束を 守れ」と要求して決行したストライキおよびこれに伴う団体行動が威力業務妨害事件と されたものである。
判決は、「被告人両名は、執行委員長武建一らと共謀の上、バラセメント業務や生コン クリート出荷業務を妨害しようと考え」という書き出しではじまる。そして、「車輌の前 に立ちはだかったり、取り囲んだりするなどしてその走行を物理的に妨げ、道路上に停 車せざるを得なくさせ」るなどの行為が「多数で一斉に行われ・・・大声で乱暴な言動を伴 うものであったから、心理的な意味においてもバラセメント輸送業務を強烈に阻害した ものと認められる」。さらに、「時折声を荒げたり、もみあいになったり、押し合いにな ったりする場面が生じてい」て、「説得活動にすぎないとはおよそ認めがたい」から威力 業務妨害行為にほかならないとしている。 他方、弁護団が主張した、事件現場とされた宇部三菱大阪港SSにおける関生支部の 行動は、企業横断的な産業別労働組合として運賃引き上げを要求するストライキへの同 調を求めた正当な団体行動だとの点については、判決は、バラセメント輸送会社などに は関生支部の組合員が存在しない、だから同社らは「関生支部との関係で争議行為の対 象となる使用者とはいえない」ので、正当な組合活動とは認められる余地はないと切っ て捨てている。組合活動の正当性に関するこの判断は、判決文 27 ページのうち1ページ にも満たない。
この大阪地裁判決は、そもそも関生支部をはじめとする労働組合側と大阪兵庫生コン 経営者会(大阪広域協組の交渉窓口)が、2015 年春闘以降の集団交渉において、生コン 価格が上昇したらバラセメントや生コンの輸送会社の輸送運賃を引き上げるとの労使協 定をくりかえし交わしていたという事実についてはひと言もふれていない。関生支部と 全港湾大阪支部がスト突入を決めたのは、これら労使協定の存在にもかかわらず大阪広 域協組側が言を左右にして協定を履行しなかったからであった。しかし、大阪地裁判決 は、ストライキに先立つこれら経緯については一切ふれず、事件現場とされた宇部三菱 大阪港SSや中央大阪生コンとはまったく無関係な第三者がいきなりあらわれて、乱暴 狼藉を働いたかのように描き出すのである。前提事実を無視したうえで、関生支部に対 する予断と偏見をもって書かれたこの判決は、労使協定を守らぬ大阪広域協組を免罪す る許しがたいものというほかない。 しかも判決は、関生支部の行動について、敵意を剥き出しにした筆致で、「組織的、計 画的に行動したもので悪質である」とまで書いているのだが、その事実認定はお粗末極 まりない。たとえば、事件当日、宇部三菱大阪港SSには、専属輸送会社の管理職、さ らには宇部三菱や、SSに隣接する関西宇部(宇部興産の生コン子会社)の社員たちま でもが大量に動員されており、その数は組合員の数を上回っていた。そして、かれら管 理職らは、組合員が、SSにやってきたバラセメント車に近づいて、運転手にストライ キに同調するよう説得するためにビラを渡したり、話しかけたりするのを、その間に割 り込んで妨害したのであった。そればかりか、かれら管理職らは事前に打ち合わせてい たとおり、5~10人がバラ車の真ん前に立ちはだかり、自ら車輌の走行を止めながら、 「車輌が通行します」などと書かれたプラカードを掲げながら「業務妨害はやめてくだ さい」と連呼し、その様子をビデオに記録させたのだった。かれら管理職らの挑発と妨 害に組合員が怒りの声を上げるのは当然である。しかも、のちの刑事裁判の証人尋問に おいては、当日のセメント出荷予定がなかった疑いさえ浮き彫りにされており、威力業 務妨害事件は「自作自演」とさえ言いうるものである。
最大の問題は、この判決が産業別労働組合の運動についての無知と無理解のうえで書 かれているという点にある。 判決は、宇部三菱セメント大阪港SSと中央大阪生コンには関生支部の組合員がいな かったことをもって、両社が「関生支部との関係で争議行為の対象となる使用者とはい えない」として、雇用関係の不存在、イコール労使関係にはないと短絡的にとらえ、し たがって正当な組合活動として「その違法性が阻却される余地はない」と決めつけてい る。しかし、関生支部は産業別労働組合である。産業全体の労働条件の底上げと平準化 を図ることや、そのために産業をとりまく取引環境の整備と改善を目的として、組合員 が存在するかどうかにかかわらず、業界を構成する企業などに団体行動をもって働きか けることは産業別労働運動のイロハであり、憲法 28 条労働基本権保障はこのような産業 別労働組合も対象とするものである。雇用関係の有無だけをもって産業別労働組合の活 動を矮小化したり否定することは到底許されるものではない。
われわれはこの大阪地裁判決に対し、強く抗議するとともに即日控訴手続をとってい る。われわれは、不当判決を覆す新たなたたかいを断固としてやり抜く決意である。
以上
2020年11月3日
全日本建設運輸連帯労働組合 中央執行委員長
菊池 進
全日本建設運輸連帯労働組合 近畿地方本部 執行委員長
垣沼陽輔
全日本建設運輸連帯労働組合 近畿地本関西地区生コン支部 執行委員長
武 建一
大阪ストライキ2次事件判決に対する抗議声明
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