「正社員として雇用するよう不当に要求した疑い」
6月18 日滋賀、19 日京都と、たてつづけに新たな弾圧事件がおきたことを受けて、24 日午後、厚生労働省記者クラブで会見をひらいた。関西生コン弁護団の永嶋靖久弁護士、中井雅人弁護士、平和フォーラムの藤本泰成共同代表、全国ユニオン鈴木剛会長、全日建は小谷野書記長が出席。会見では、京都の事件について説明した。
この事件、生コン業者・村田建材(京都府木津川市)で働いていた非正規雇用の生コン運転手が正社員化を求めて組合加入したことが、「正社員として雇用するよう不当に要求した疑い」(京都新聞)とされ、強要未遂および恐喝未遂の事件に仕立て上げられている。正社員化要求が「不当な要求」というから驚き。実際の経緯は次のようなものだ。
保育園に提出する「就労証明書」に押印を求めたことが「強要」
2017 年10 月、生コン運転手が組合に加入した。社会労働保険の加入など正社員化を要求した
のだが、会社は団交拒否。さらに組合員が保育園に提出する「就労証明書」に社印の押印求めた
ところ、加入以前は毎年なんの問題もなく押印していたのにこれも拒否した。そこで組合が抗議
したことが「強要未遂」とされている。
その後、同社は2017 年12 月、団体交渉に応じぬまま組合目的で工場を偽装閉鎖した。同業者
でつくる洛南生コン協同組合が争議解決の仲介の労を執り、閉鎖するならプラントを解体・撤去
するとともにミキサー車1台を協同組合に無償譲渡することについて同社と念書を交わす。これが「恐喝未遂」とされている。ところが2018 年春にかけて、同社は約束を守らず事業再開の動きをみせた。
不当労働行為事件の審問と和解調査
そこで2018 年6月と9月、2度にわたり組合が団交拒否と偽装閉鎖について大阪府労働委員
会に不当労働行為救済を申し立て。今年4月、5月と証人尋問が2回行われた。そして、逮捕の
翌日には、双方が提出した和解案をもとに和解調査が予定されていたのだった。
どこからみても純然たる労働争議なのに、ここに俗にいえばマル暴(暴力団対策でもっぱら活
動する組織犯罪対策課)が乗り込んできて刑事事件にしたわけだ。
昨年からつづく弾圧事件はどれも不当であり、とりわけ、建設現場の違法な工事を調査、指摘
することを恐喝とするなどとして逮捕をくりかえしてきた滋賀県警組織犯罪対策課のやり方は、
労働争議によくあるこれまでの刑事弾圧事件と位相を異にする異常さなのだが、京都府警の事件
はそれ以上に極めつけに異常な弾圧事件というほかない。まさに刑事免責を定めた労組法がマル
暴警察によって蹂躙されている感がある。
滋賀県警「現場ごとに事件にする」
この日の会見で取り上げた新たな弾圧事件のうち、18 日の弾圧は滋賀県警組織犯罪対策課に
よるもの。滋賀県大津市内のネッツトヨタびわこの店舗新築工事(滋賀県大津市)に対するコン
プライアンス活動が威力業務妨害とされ、関生支部の組合員4人が逮捕された。これは湖東協組
事件、大津協組事件とおなじ類型の弾圧といっていい。
逮捕者の1人は昨年11 月に大津協組事件で逮捕され、今月初めに6か月半ぶりに保釈された
ばかり。また、逮捕令状を示されなかった組合員もいる。マル暴の傍若無人ぶりを端的に示すエ
ピソードだ。昨年いらい、滋賀県警は逮捕者の取り調べで「コンプライアンス活動は今後はやら
せない」「現場ごとに事件にする」と豪語していた。
京都・村田商事事件は協同組合理事長らも逮捕
19 日は京都府警。これも府警の組織犯罪対策課1係。前述したとおり、非正規雇用の生
コン運転手が正社員化を要求したところ会社が団交拒否、偽装閉鎖で組合排除を強行した労
働争議なのに、武委員長ら組合役員と組合員の計5人が逮捕され、事業者も洛南生コン協同
組合の理事長ほか1名、合計7人が逮捕されている。
ここでも逮捕者のひとりは、昨年8月に逮捕されて今年3月に7か月ぶりに保釈されたば
かりの組合役員。また武委員長ほか1名は4回目の逮捕である。
良心的事業家たちを威嚇
さらに京都府警は翌20 日、翌々日の21 日と関生支部と労使関係がある企業4か所などに
家宅捜索をおこなっている。昨年からつづく大阪広域協組の関生支部排除の不当労働行為に
加勢して、大阪府警や滋賀県警は企業に対して「関生支部と手を切れ」といわんばかりの家
宅捜索や任意出頭をくりかえしてきた。事業者に動揺が広がっているが、京都府警の家宅捜
索もその一環である。取り調べで警察は関生支部つぶしが目的だと悪びれずに口にしてきた。
昨年7月に湖東協組事件で事業者がまず逮捕されて以来、これで逮捕劇は12 回目。組合
がのべ67 人、事業者が8人、合計のべ75人逮捕という空前の権力弾圧事件となった。