子会社5社の品質データ改ざんが昨年秋に発覚した三菱マテリアル。今年6月、新たに本社が関与した不正隠しが判明したが、竹内章社長ら取締役はだれも責任をとらない。
6月22日、三菱マテリアル第93回株主総会が都内のホテルでひらかれた。焦点はあいつぐ不正事件の真相と経営陣の責任。しかし、抽象的であいまいな経過説明をくりかえす取締役会に、会場から怒りの声がいくども上がった。本社のだれが、どのように不正を隠すことを決めたのか。具体的に説明すべきだとの株主の質問を竹内社長は途中で遮り、妨害する始末だった。
第1の不正事件は、三菱電線など5つの子会社が製品の品質データを改ざんしていたというもの。取引先は825社にのぼり、不正は1970年代からつづいていた。東京地検が強制捜査した神戸製鋼所の事件を上回る規模。三菱は子会社2社の社長を引責辞任させたが、竹内社長と矢尾会長は月額報酬3カ月分を返上しただけ。今年3月に改ざん事件の最終報告書をまとめた際の記者会見では本社の責任の取り方を疑問視する質問があいついだが、竹内社長は「二度と起こさないようにするのが私と経営陣の責務」と逃げた。
ところが、6月8日になって、第2の不正事件=直島精錬所の品質不正事件が発覚した。直島精錬所(香川県)は子会社ではなく、三菱マテリアル本体のドル箱事業である銅精錬の中心的事業所。関西地方の生コン工場や四国地方のコンクリート工場で骨材として使われる銅スラグ(精錬過程で生じる副産物)が規格外だったのに、データを改ざんして出荷していたことから、同日付で日本品質保証機構から「基準を満たしておらず内容が重大」だとしてJIS(日本工業規格)の認証を取り消された。
しかも、本社は子会社のデータ改ざん事件の最終報告書を発表した3月段階で、この第2の不正事件を把握していたにもかかわらず、その事実を隠したまま何食わぬ顔で最終報告書を発表。その後も4月から製品出荷を自粛していたのに公表してこなかった。だれが、この不正隠しを指示したのか。
株主の質問とメディアの追及にもかかわらず、取締役会は株主総会で、竹内社長が代表権のない会長に、対策本部長だった小野副社長を社長に就任することを強引に決めて開き直っている。