著名なジャーナリストらが共同声明 「レイシスト集団を利用する大阪広域生コン協組に抗議する」

ヘイトスピーチ解消法に逆行

著名なジャーナリストらが、「レイシスト集団を利用する大阪広域生コン協組に抗議する共同声明」を公表した。ジャーナリストの青木理、魚住昭、斎藤貴男、竹信三恵子、安田浩一、ルポライターの鎌田慧、作家の中沢けい、精神科医の香山リカほか31人の方々がよびかけ人となっている。(5月1日現在)

 

(左から、香山リカさん、斎藤貴男さん、鎌田慧さん)

大阪広域生コン協組は現在、排外主義を主張し、外国人差別を煽るヘイトスピーチやデモを主導してきたレイシスト集団を使って、連帯ユニオン攻撃をつづけている。共同声明は、このような事態を「醜悪な癒着」だと表現し、「企業がレイシズムの増長を促すような事態を、けっして看過することはできない」という立場から出されたもの。
2016年、ヘイトスピーチを許さず、差別と偏見のない社会を目指すための努力を求めた「ヘイトスピーチ解消法」が成立。ヘイトスピーチが社会にとっての害悪であることは広く認識され、国や自治体がさまざまな活動をすすめている。

差別に加担する企業や業者団体でいいのか?

それにもかかわらず「ヘイトスピーチをまき散らし、差別扇動行為を繰り返している団体を支援し、手を組むことは、まさに解消法の理念に反する行為でもあります。広域協に、そうした自覚はあるのでしょうか。」と指摘したうえで、共同声明は「レイシスト集団との”共闘”は、(協同組合の)理念も目的も無視した暴挙であると言わざるを得ません。人間のつながりや地域、社会を分断するための活動に加担することは、協同組合の役割ではないのです。」と批判。「私たちはマイノリティに対する不当な差別を絶対に許容しません。差別に加担する企業や業者団体の存在も認めません。ヘイトスピーチ解消法の理念に反するような動きを看過しません。(中略)レイシスト集団の跳梁跋扈に、そこに肩入れする広域協に、強く抗議します。」と表明している。

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共同声明とよびかけ人は以下のとおり。

レイシスト集団を利用する大阪広域生コン協組に抗議する共同声明

醜悪な”癒着”が問題となっています。
排外主義を主張し、各地で外国人への差別を煽るデモを繰り返してきたレイシスト集団が、生コンの業者団体と密接な関係にあることが判明しました。業者団体をスポンサーとしたレイシスト集団は現在、生コン業界における労働運動つぶしに加担しています。
私たちは、差別のない自由で公正な社会を願っています。そうした観点から、業界に寄生して利益を得るレイシスト集団も、レイシスト集団を”傭兵”として利用する業者団体も、ともに許すわけにはいきません。
企業がレイシズムの増長を促すような事態を、けっして看過することはできないのです。

いま、あるまじき”暴走”が問題視されているのは、大阪府と兵庫県の生コン企業によって組織される業者団体「大阪広域生コンクリート協同組合」(広域協)です。加盟社164社を誇る日本最大の生コン協同組合でもあります。
その広域協が、今年に入ってから”労組対策”を名目に、業界外部からレイシスト集団を招き入れました。ナチスのシンボルであるハーケンクロイツの旗を公然と掲げ、振り回し、マイノリティを威嚇しながら、差別デモを主導してきた者たちです。
レイシスト集団は街宣車を使って、連日、連帯ユニオン関西地区生コン支部の事務所などに押し掛け、示威行動をおこなっています。街頭で労組攻撃の宣伝活動をおこなうこともあります。広域協の役員をも帯同した活動は異様としか言いようがありません。
レイシスト集団のリーダー格である瀬戸弘幸氏は70年代から右翼活動に参加し、ネオナチを標榜する団体の設立にも関わりました。今世紀に入ってからは、在日コリアンの排斥を主張する「在日特権を許さない市民の会」(在特会)と歩調を合わせ、全国各地でおこなわれた差別デモをけん引してきました。現在は、在特会の元会長が党首を務める政治団体「日本第一党」の”顧問”なる肩書も持っています。
瀬戸氏やその仲間たちは、これまで、在日コリアンをはじめとするマイノリティの「追放」「排除」を主張し、街頭やネットで差別と憎悪を煽ってきました。在日コリアンの集住地域である大阪・鶴橋、東京・新大久保で、地域住民への殺戮を煽るような示威活動をおこなってきたのも、まさに瀬戸氏が関係してきた在特会などのレイシスト集団です。
在特会や日本第一党のメンバーは、過去に「京都朝鮮学校襲撃事件」(2009年)、「徳島県教組業務妨害事件」(2010年)をはじめとする様々な暴力事件を起こしています。また、在日コリアンに対するヘイトスピーチをネット上に書き込んだことで、現在も民事裁判が争われています。
業者団体である広域協は、これら事件の加害者たちと深い関係を持ち、いや、自ら差別運動を展開してきた人物と手を組んだのです。それは協同組合として(あるいは企業経営者としての)モラルに反した行為であると同時に、社会秩序の破壊を後押しするレイシズムへの積極的な肩入れにほかなりません。
2016年、「ヘイトスピーチ解消法」が成立、施行されました。ヘイトスピーチを許さず、差別と偏見のない社会を目指すための努力を求めた法律です。
同法によって、ヘイトスピーチが社会にとっての害悪であることは広く認識されるようになりました。ヘイトスピーチをなくすために、各地で様々な取り組みも始まっています。
こうして社会的圧力が強まるなか、追い込まれたレイシスト集団があらたな”活動の場”として行き着いたのが、まさに労働運動つぶしの現場だったのでしょう。
ヘイトスピーチをまき散らし、差別扇動行為を繰り返している団体を支援し、手を組むことは、まさに「解消法」の理念に反する行為でもあります。広域協に、そうした自覚はあるのでしょうか。
協同組合とは本来、単なる企業の集合体ではなく、中小零細企業やそこで働く人々の相互扶助を理念とし、諸権利を守り、さらには企業活動で得た利益を社会に還元させることをも目的とした組織です。大企業の専制支配に対抗するために、社会が必要とする組織です。レイシスト集団との”共闘”は、理念も目的も無視した暴挙であると言わざるを得ません。人間のつながりや地域、社会を分断するための活動に加担することは、協同組合の役割ではないのです。
私たちはマイノリティに対する不当な差別を絶対に許容しません。
差別に加担する企業や業者団体の存在も認めません。
「ヘイトスピーチ解消法」の理念に反するような動きを看過しません。
繰り返します。私たちは自由で公正な社会を願っています。差別や偏見のない社会を望んでいます。そのために、私たちは表現活動をおこなっています。
私たちは差別を煽るいかなる動きにも反対します。レイシスト集団の跳梁跋扈に、そこに肩入れする広域協に、強く抗議します。

2018年5月

◎よびかけ人
青木 理(ジャーナリスト)
明戸隆浩(立教大学ほか非常勤講師)
魚住 昭(ジャーナリスト)
金澤 壽(全労協議長)
海渡雄一(弁護士)
鎌田 慧(ルポライター)
香山リカ(精神科医)
河合弘之(弁護士)
木下武男(労働社会学者、元昭和女子大学教授)
熊沢 誠(甲南大学名誉教授)
後藤道夫(都留文科大学名誉教授)
五野井郁夫(国際政治学者)
斎藤貴男(ジャーナリスト)
斎藤日出治(大阪労働学校・アソシエ学長)
佐高 信(評論家)
里見和夫(弁護士)
鈴木 剛(全国ユニオン会長)
高橋若木(大学講師)
竹信三恵子(ジャーナリスト、和光大学教授)
土屋トカチ(映画監督)
中川 敬(ミュージシャン、ソウル・フラワー・ユニオン)
中沢けい(作家)
中島光孝(弁護士)
永嶋靖久(弁護士)
棗 一郎(弁護士)
平賀雄次郎(全国一般全国協委員長)
藤本泰成(平和フォーラム共同代表)
松本耕三(全港湾委員長)
宮崎 学(作家)
宮里邦雄(弁護士)
安田浩一(ジャーナリスト)
(第1次、5月1日現在)